われわれの中で問題視された左ハンドルと車の大きさについては、逆にそれをいかすような形で右側助手席に電動車椅子を固定する装置を組み込み、右側助手席を車椅子専用運転席とする案が浮上した。しかし、アナフィールド社が開発中の床下収納リフトの完成が間に合わず、車内にリフトの支柱が設置されてしまい車椅子で右側助手席ヘアプローチすることができなくなってしまった。右側助手席に車椅子の固定装置を組み込む案は諦めざるをえなかった。
第2節 ナンバーの交付
3月17日にジョイスティックコントロールカーが横浜港に陸揚げされた。日本の公道を走るのに必要な方向指示機等若干の変更作業に早速とりかかった。これらの作業は輸入車などを日本国内基準にするための改造を手がけている日産陸送株式会社に協力していただけることになった。
ポイントとなっていた車椅子の固定に関しては、固定装置が20Gという安全基準をクリアしているという証明書をアナフィールド社に送ってもらい添付することにした。しかし、1ヶ所のみの固定ではそこを軸に回転したり、シーソーのように浮き上がる可能性を運輸省の担当者の方が心配し、回転防止の軸と浮き上がり防止のバーを取り付けることになった。
車椅子は、アメリカでやはり座席として認められているアクション社の電動車椅子を使用することにした。車椅子のフレームは問題ないが、ヘッドレストなど日本の基準にあった変更も必要である。そこで、車椅子のシート部分をそっくり取り外し、自動車用のシートを取り付けることにした。
これで法的には問題なくなった。
3月28日のお披露目式にはナンバーの交付が間に合わなかった。が、ニュースステーションでお披露目式の様子が放映され司会者や解説者の運輸省への辛口のコメントが影響したのか、運輸省から次のような内容の電話が入った。
「ジョイステイックコントロールカーを早く陸運局に持ってきて下さい。運輸省としては速やかに対応をしたいと考えているのです。遅れているのはJoy Projectが車椅子の改造に手間取っているためですね。運輸省は2連敗していますからこれ以上連敗するのはつらいです」
2連敗とは、1月30日と4月2日に放映されたニュースステーションでの司会者のコメントを指しているのだろうが、運輸省の対応の変化にはこちらがとまどうばかりであった。
問題を普遍化し一般社会にアピールすることで担当省庁の対応が変わることは予想はしていたが、想像以上の展開の早さであった。
車椅子の固定装置も取り付けられ、細かい変更も終わり、いよいよナンバーの申請の日が訪れた。
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